スタートアップが知財を自ら考え使いこなすための大局的視点

2017年頃から、自社事業を構成する一要素として知財を考えるスタートアップが増えています。知財を考えて、ご相談いただいてこちらでどのような取り組みを行うのが適当か提案します。投資家の方がいれば、投資家との定期的なミーティングの際に知財を検討すべきポイントに投資家が気付いて、そのタイミングでご紹介をいただくこともあります。

知財に取り組むスタートアップは増加してきたものの、いずれのケースにおいても、スタートアップの経営者に知財に十分な理解がなく、自ら考えて知財制度を使いこなしているとまでは言えません。

Meeting Room im Hochhaus

では、スタートアップが知財制度を使うこなすために経営者がもつべき大局的な視点はなにか。整理していきます。

知財とは、価値ある情報に対して、特許法、意匠法、商標法、著作権法、不正競争防止法、民法等の各種法律が与える権利の総称です。大別すれば、知財を形成するプロセスと形成した知財を活用するプロセスに分かれます。

知財の形成は、自ら取得する場合と、他社との契約により取得する場合があります。

自ら取得するためには、著作権は創作とともに発生しますが、それ以外の特許権・意匠権・商標権等は出願という手続を必要とします。それぞれの法律で権利が認められるための要件が定められており、出願をすべき適切なタイミングを理解していなければ、これらの制度を活用することができません。出願とは情報の開示行為の一類型ですので、より広く言えば、自社で生まれた価値ある情報の適切な取り扱いを理解していなければいけません。他社との契約により取得するためには、事業モデルに応じて譲ってはいけない条件があり、交渉時に主張すべきポイントを把握している必要があります。

知財の活用は、競合の模倣抑止に用いる場合と、ステークホルダーに対する自社優位性の可視化に活かす場合があります。

模倣抑止に用いるためには、各権利を行使するためのプロセスを理解して、最小の労力で最大の結果を得るための打ち手を判断していくことになります。同時に、権利行使の最終地点である訴訟提起という判断は場合によっては社会的な反発を生むこともあり、自社の正義の妥当性を社内外に説明できる準備を慎重にしておくことが大切です。権利行使を受けた相手方が容易に従うことは期待できないため、知財を行使すれば競合を打ち落とすことができると過度な期待をすることなく、知財の行使を総合的な競争戦略の一手として位置づけるバランスが求められます。

balancing stones
ステークホルダーに対する可視化に活かすためにも同様で、特許権を取得したという事実のみをたとえば投資家が評価することはないと言えます。あくまで自社優位性の全体像の中で適切に位置づけられた知財を保有していることを発信できれば投資家であったり協業相手にポジティブに評価され、またそのような複合的な視点で物事を考え抜く思考力が評価されます。

それぞれの点について、事業ごとに強弱があり、また事業ごとに詳細は異なります。但し、経営者として知財について大局観をもつとすれば、概ねこのような整理で足りるでしょう。