インターネットがなかったら。
今さら現実的ではないけれど、この問いをしてみると目の前の事業がインターネット的な新しさのあるものなのかを正しく捉えることができるようにおもう。
インターネットにウェブが生まれて、ウェブブラウザが現れた。ウェブブラウザが生まれて、サーチエンジンが生み出された。ウェブとは異なるアプローチとして、P2Pのファイル共有ソフトが猛威を振るった。通信速度の向上が動画配信を可能とした。インターネットの高機能化が情報入手のルートとしてインターネットを浸透させていった。
インターネットの浸透は、ネットワーク上で流通する情報量の増大に留まらず、その質を変えた。実用的な情報に加えて、個人的な情報がSNS上に投稿されるようになり、モバイルデバイスの低価格化がリアルタイムな情報発信を容易にしてSNSを加速した。あらゆる情報が今すぐ手に入るだけでなく、自撮りを含め、今すぐ情報発信ができるようになった。
また、モバイルデバイスの普及は、そのユーザーをインターネットに繋ぐだけでなく、そのユーザーと共に車・鍵等のさまざまなモノをインターネット上で可視化した。今は、センシングデバイスの価格低下がモノ自体をネットワーク化している。
パーソナルデータやIoTデータというこれまでアクセスできなかった情報は、クラウド上で解析されて、そこに大きな付加価値が生まれている。AI/MLの進展は、こうしたインターネットの劇的な広がりにより利用可能となったデータの恩恵を受けている。クラウドは他のクラウドとAPIによって繋がり、連鎖的に効率化が進んでいく。
多様な情報が場所を問わず、国境を問わず行き交う中で、インターネットが苦手とする信頼に注目が集まっている。
出所不明で信頼性を欠くフェイクニュースが大統領選を左右したとも言われると同時にブロックチェーンが金銭的価値に留まらない信頼の伝達手段として有望視されている。シェリングエコノミーの相互評価は今、信頼の問題について示されている一つの解と言えるだろう。社会にとって欠かせない存在となったインターネットは、更なる高機能化が求められている。
インターネットらしさはどこだろう。
これまでご一緒したスタートアップの事業を改めて振り返り、インターネットらしさを考えてみて、はっきりと言語化できていなかったこの視点をこれからはもっと大切にしていきたい。