ポストインターネットの好例「mobike」

ウェブブラウザが生まれて25年以上を経て、インターネットにつながることがあらゆる場面で前提となりつつある。PCからモバイル、そしてIoTとつながる対象も拡大している。インターネットがもたらす新たなつながりは、計り知れない自由度をビジネスに与えている。

インターネットに溶け込む「mobike」

たとえば、中国の自転車シェリングサービス「mobike」はその好例と言える。スマホでアプリを開くと、自転車はIoT化されていて、近くで利用可能な自転車が表示される。スマホ自体もGPSで現在位置が分かれば、乗りたい自転車を歩いて見つけることができる。

mobikeの動作画面一例

(中国上海市でのスクリーンショット)

自転車を見つけたら、後はbluetoothをONにして座椅子下のQRコードをスキャンするだけで鍵がアンロックされて乗車可能となり、課金が開始される。乗り終えたら鍵を手動でロックすればそのタイミングでオンライン決済が完了となり、利用者はそのまま自転車を乗り捨ててしまってよく、近くに来た次の利用者がまた乗っていく。

利用者が地上で自転車を目の前にしつつ、すべてがインターネットと自然につながっているこの乗車体験はとても新鮮で、2015年12月創業にもかかわらず、mobikeはこれまでに9.28億ドルを調達して急速に世界展開を進めている(crunchbase調べ)。

ポストインターネットの可能性

mobikeの中で唯一インターネットらしくない点は乗り捨てられた自転車の回収だ。次の利用者の見つかりにくい場所に乗り捨てられた自転車は人手で回収する必要がある。いかにも中国らしい人海戦術と片付けてしまいがちだが、それではmobikeの本質を見落とす。

mobikeは、モバイルとIoTによりインターネットに溶け込んだサービスとして自転車の乗車体験を極限まで高めた上で、そこからはみ出てしまった自転車の回収を単純作業として事後的に処理することで成立している。多くの人は、乗り捨てられた自転車はどうするのかという問いが頭に浮かんでしまうのに対し、今のインターネットを最大限取り込んだら何が出来るかという問いが先に来ている。

新しいテクノロジーが現れても、人は、それまでの常識に囚われて暗黙の前提を置いてしまう。しかし、新しいテクノロジーの可能性を全身で受け止めた起業家は、そうした常識を一旦括弧に入れて新たな解を見出す。その解にはmobikeの自転車回収のように不格好な点も残るかもしれないが、自動車が排気ガスを出すように、テクノロジーはそうして進歩してきたのだろう。インターネットが当たり前になったポストインターネットのこれから、mobikeは、まだまだ目の覚めるようなサービスが生まれてくる余地を感じさせてくれる。