弁理士大谷からのお願い-知財責任者のご指定-

弁理士大谷は、依頼者の事業を正しく理解した上で未来を変えていくスタートアップの特許・商標を最先端の実務で支えています。

事業を正しく理解することが出来なければ、その成長に寄与する打ち手としての特許・商標への取り組みをすることは出来ません。そして事業を正しく理解するためには、当職のカウンターパートが自社事業の今とこれからを正しく理解していることが欠かせず、このことは、当職のカウンターパートが取締役、執行役員等の役員レベルであることを多くの場合要求します。こうした適切なカウンターパートを知財責任者として定めて戴き、コミュニケーションを重ねていく中で、互いに事業と知財についての理解が深まり、価値のある成果を生み出すことができます。

起業直後に初めて起業家の方とお会いして、特許・商標への取り組みを始めた後、資金調達を経て会社のステージが変わっていくにつれて、一担当者に知財の問題を割り振って自ら関与しなくなることがあります。自社事業の今とこれからを正しく理解した上でどのような取り組みをすることが事業の成長を加速し得るかの検討を入社したばかりの一担当者と行うことは不可能です。

もちろん、会社の成長とともに社内弁護士が加わったり、役員ではないものの役員と極めて近い距離で戦略的な視点で業務を行っている方が加わったりすることがあります。こうした方を知財担当者として戴くことはあります。

いずれにしても、スタートアップがその限られたリソースの中で成果を生み出すためには、相応の知財責任者を定めていただき、経験を重ねていくことが不可欠であって、私一人の力で出来ることには限りがあります。会社の成長とともに知財責任者の変更又は知財担当者の指定が適切な場合には、後任の方にスタートアップの社内で引継ぎがなされることも不可欠です。大企業において数十人、数百人が日々知財の業務に当たっている状況において、事業の新しさを強みに極めて限られたリソースの中で成果を生み出すことを試みているのであって、当然の要請です。

しかしながら、これまで、特許出願を受任する際の委任契約書では知財責任者を明示して戴いておりましたが、スタートアップとのファーストコンタクトがほとんどの場合取締役であり、自社事業についての深い理解を有している方であることから、明示的に知財責任者のご指定をお願いしていないことが少なからずありました。

誰も注目していなかった「スタートアップ×知財」という領域で、少しでも広く知財に取り組む意義を伝えていくことを目的としてきたこの数年間は、これもスタートアップが知財に取り組むハードルを下げる観点で必要なことでしたが、環境は変わり、スタートアップがこれまで以上の大きな成長を目指す中で大手企業は欠かさず取り組んでいる知財への取り組みへの感度も高まっています。

これからは、取締役、執行役員を含む役員、社内弁護士又は協議の上定めたその他の知財責任者のご指定を必ずお願いすることとしていきます。

2022年7月22日改訂

グラフィクスとしての特許図面

特許出願に必要な書類は、願書、特許請求の範囲、明細書、図面と要約書です。

願書には、出願人の社名及び住所、発明者の氏名及び居所などを記載します。特許請求の範囲には、権利化したい発明を記載します。ここに記載した内容が審査対象になります。明細書には、権利化したい発明をその詳細を含めて説明します。ここで説明した内容の範囲で特許請求の範囲を審査に向けて書き替えることができます。図面は、明細書の説明を分かりやすくするために作成します。要約書は、出願人の立場としては必要ではないのですが、新たな発明を特許出願という行為によって社会に公開することの代償として一定期間権利を付与するという特許制度の目的達成を促すために、発明の内容を簡潔に第三者に伝えるためのものとして記載することが要求されています。

ここで、特許請求の範囲は権利化の対象である発明のコアコンセプトを記述していく書類となるため、とても重要なものですが、図面も重要な役割を果たします。たとえば新たなIoTサービスの発明を例として考えると、まず、そのサービスの提供に当たってデータの送受信を行うデバイスを特定し、それらの接続関係を図示します。次に、それらのデバイスの中でその発明の特徴的な処理を実行するデバイスを中心として、どのようなデータがそのデバイスに入力され、そこでどのようなデータ処理が行われ、そしてどこに向けてどのようなデータが出力されるのかという流れを図示します。

IT、IoT、AI、ブロックチェーンのようにソフトウェアが関わる発明を明細書で説明していく上で、目に見えないデータの抽象的な関係性を図式的に可視化していくこのプロセスは、特許請求の範囲の記載を決定していく前提として欠かせません。

また、データの入出力において表示画面を伴う場合には、UIを描きます。UXが発明において意味を持つような場合には、特許図面では通常行われている線画化をせずに画像としてスクリーンショットを用いることもあります。発明の挙動を実証した具体的な結果がある場合には、グラフとして示します。こうした図面とそれを参照してなされる明細書における説明は、抽象化して記述される特許請求の範囲に手触りのある確からしさを与えます。

白黒の線画を基本とする特許図面にインフォグラフィクスのような派手さはないものの、複雑な発明であればあるほど整理された図解は、特許請求の範囲における抽象化な記述と明細書における具体的な記述とをつなぐものとして大切です。