スタートアップの新規性喪失を巡る一考察 補足

「スタートアップの新規性喪失を巡る一考察」(パテント、2019年1月号、共著)は、スタートアップの特許出願において頻発する新規性喪失の問題について整理した上で、実務上の指針を示しています。

脱稿後、米国最高裁が守秘義務を負う者に対する販売もAIA改正後の米国特許法102条(a)(1)における”on sale”に該当し、新規性を喪失させる先行技術を構成する旨の判断を示しました(Helsinn Healthcare S.A. v. Teva Pharmaceuticals USA, Inc.)。それに伴い、米国特許商標庁(USPTO)は注18に挙げた特許審査便覧(MPEP)における記載を改訂しています。したがって、現時点では、注18を根拠とする14頁左欄「4.実務上の指針(1)29条1項 NDAの活用」14-15行の「米国及び欧州」は「欧州」についてのみ正しいこととなります。

秘密裡の販売は、上述のとおり、新規性を喪失させる先行技術になるものの、優先日から1年以内のグレースピリオドであれば米国特許法102条(b)(1)(A)により先行技術となりません。NDA締結下で行われるあらゆる情報開示が先行技術となるものではないですが(Pfaff v. Wells Electronics, Inc.)、米国での権利化の可能性があるならば、発明の特徴的部分に関する情報開示をなんらかのかたちで行った場合には、それがNDA締結下であっても、遅くとも当該開示日から1年以内に日本出願を行い、優先日を確保することが実務的に望まれます。