特許出願に必要な書類は、願書、特許請求の範囲、明細書、図面と要約書です。
願書には、出願人の社名及び住所、発明者の氏名及び居所などを記載します。特許請求の範囲には、権利化したい発明を記載します。ここに記載した内容が審査対象になります。明細書には、権利化したい発明をその詳細を含めて説明します。ここで説明した内容の範囲で特許請求の範囲を審査に向けて書き替えることができます。図面は、明細書の説明を分かりやすくするために作成します。要約書は、出願人の立場としては必要ではないのですが、新たな発明を特許出願という行為によって社会に公開することの代償として一定期間権利を付与するという特許制度の目的達成を促すために、発明の内容を簡潔に第三者に伝えるためのものとして記載することが要求されています。
ここで、特許請求の範囲は権利化の対象である発明のコアコンセプトを記述していく書類となるため、とても重要なものですが、図面も重要な役割を果たします。たとえば新たなIoTサービスの発明を例として考えると、まず、そのサービスの提供に当たってデータの送受信を行うデバイスを特定し、それらの接続関係を図示します。次に、それらのデバイスの中でその発明の特徴的な処理を実行するデバイスを中心として、どのようなデータがそのデバイスに入力され、そこでどのようなデータ処理が行われ、そしてどこに向けてどのようなデータが出力されるのかという流れを図示します。
IT、IoT、AI、ブロックチェーンのようにソフトウェアが関わる発明を明細書で説明していく上で、目に見えないデータの抽象的な関係性を図式的に可視化していくこのプロセスは、特許請求の範囲の記載を決定していく前提として欠かせません。
また、データの入出力において表示画面を伴う場合には、UIを描きます。UXが発明において意味を持つような場合には、特許図面では通常行われている線画化をせずに画像としてスクリーンショットを用いることもあります。発明の挙動を実証した具体的な結果がある場合には、グラフとして示します。こうした図面とそれを参照してなされる明細書における説明は、抽象化して記述される特許請求の範囲に手触りのある確からしさを与えます。
白黒の線画を基本とする特許図面にインフォグラフィクスのような派手さはないものの、複雑な発明であればあるほど整理された図解は、特許請求の範囲における抽象化な記述と明細書における具体的な記述とをつなぐものとして大切です。