オープンイノベーションのこれからのかたち

スタートアップが大手企業と組んで、より大きな舞台でビジネスを設計する例が増えています。

スタートアップはこれまでにない新たな視点をもっているものの自社リソースで出来ることには限りがあります。他社とのアライアンスを一つ一つ積み上げていくことで競争力を急速に高めることができます。大手企業は土地勘のない新しい潮流にいち早く乗ることができます。

その際に常に問題となるのがアライアンスから生まれる成果物である知財の取り扱いです。たとえば、人工知能(AI)の基礎技術をもつスタートアップが事業会社からその業界特有のデータ提供を受けて学習済みモデルの開発を行うようなケースで、どちらの当事者にどのような権利が帰属してどのような権限が与えられるのかといったような交渉になる場面です。

このような場面で知財の取り扱いを一般に定めるルールはないため、当事者間がそれぞれの貢献度等に照らして契約上合意するということになりますが、ケースバイケースの判断であるため、混沌としているのが現状です。

そのような中、マイクロソフト社は先日、マイクロソフトと協業する企業との間で生まれた技術と知財の取り扱いについて「顧客企業がテクノロジーによって事業を成長させることを支えるとともにマイクロソフトにはそのプラットフォーム製品を改善し続ける自由を与える健全なバランスを取るように設計」を考えたイニシアチブ「Shared Innovation Initiative」を発表しました。

7つの原則が打ち出されており、特に「Assuring customer ownership of new patents and design rights」という協業から生まれた知財は顧客に帰属させるという点と「Support for open source」という顧客が希望すればそうした知財のオープンソース化に協力するという点が瞠目です。前者においては顧客に知財を帰属させるのみではなく特許出願のプロセスまで支援するとされています。

そしてバランスを取るために「Licensing back to Microsoft」として顧客に帰属させた知財を顧客に提供したプラットフォームに関連する範囲でマイクロソフトに使用許諾をしてもらうということを定めています。

大手企業がスタートアップとのアライアンスによるイノベーションの加速をするのであれば、業務提携の段階であればマイクロソフトのように権利帰属はスタートアップ側としてその利用権限の付与でバランスを取り、知財を大手企業に帰属させたいのであればそのスタートアップを買収するぐらいのコミットを示すというかたちがこれからの一つのかたちではないでしょうか。

日本の大手企業にもマイクロソフト社のようにオープンイノベーションに対する姿勢をきちんと言語化して打ち出すことを期待したいですね。そうすればスタートアップは安心して知見をシェアすることができるようになります。

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