PROFILE

KAN OTANI| Patent Attorney |@kan_otani_jp

2021 Dec-2022 Nov Japan Patent Office (JPO), Industrial Property Council, Patent Attorney Examination Committee

2020 Jan-2021 Feb Head of IP, Microwave Chemical Co., Ltd.
2016 Dec-2019 Dec Outside Director, Aucfan Co., Ltd.

2017 Established Roppongidori Patent & Trademark Attorney
2012-2016 OHNO & PARTNERS
2011-2012 Anderson Mori & Tomotsune

2021 LSE Certificate in Data: Law, Policy and Regulation
2005 S.M. in Applied Physics, Harvard University
2003 B.S. in Applied Physics, Keio University

2014-2022 Selected as one of leading patent practitioners in Japan in prosecution category by Intellectual Asset Management

2014-2016 2019-2022 Selected as one of leading patent practitioners in Japan by Managing IP

六本木通りオフィスアワー

2017年4月より無料で30分ご相談をお受けするオフィスアワーを設けます。

内容は商標特許採用出資など、どんなことでも。六本木通り沿いで何かお役に立てたら、また私自身より視野を広げられたらとおもいます。ご連絡お待ちしております。

より具体的なご相談はこちらよりお願いいたします。

プライバシーポリシー

セカンドオピニオンのすすめ

お腹に違和感を覚えて病院に行ってみたら「ガンです。ガンなので、すぐに手術して摘出します」と言われたらどうされますか。

多くの方は「家族と相談させてください」「もう一度詳しく説明をお願いします」「少し考えたいです」といったお答えをするのではないでしょうか。

友人に医師がいれば、急いで連絡をして「本当に切除しないといけないの?」と確認をしたくなるでしょう。ただ、信頼できる旧知の友人に医師がいる方ばかりではありません。そこで「セカンドオピニオン」という考え方が医療分野では広まりつつあります。

たとえば、虎ノ門病院では「セカンドオピニオン」についての以下のように説明しています。

セカンドオピニオンとは現在の自分の病状や治療方針について他の医師の意見を求めることをいいます。 患者さんが当院以外の医師の意見を求められる際には、当院での診療上のデータを積極的に提供いたします。

・・・

医師は自分が最もよいと思う方針を勧めます。しかし別の立場の医師からも意見を聞けば、治療法について具体的な比較ができ、より適した治療法を患者さん自身が選択することができます。

ガンのように人生で初めて直面する問題に対し、自分の力で最善の選択をすることは困難です。

特許も、似たところがあります。多くの起業家にとって特許出願は初めてです。出願すべきなのか、出願後の取り扱いはどうすべきか、特許庁から届いた書面にどう向き合えばよいのか。

特許制度の性質上、発明が生まれた瞬間に時計の針は回り出し、これを止めることは出来ません。日々進行していくガンに対してそのとき最善と考えた治療を選んでいくほかないように、日々変化する自社他社の事業状況の下で初めての判断をしていくことになります。ガンを一月放置したら取り返しがつかなくなるおそれがあるように、一月の遅れで数億円の知財価値を失うおそれがあり、実際手遅れのケースを数多く目にします。

弁理士の説明を聞いたもののどうするのが最善なのか分からないときに、放置してしまうのではなくセカンドオピニオンを求めてみることが普通のことになれば、起業家の方々に「こうすればいいんだ」という納得のいく判断をしていただくことができ、その積み重ねが特許に対する正しい理解を根付かせることになるのではないかと期待しています。

でも、初めてのことばかりのスタートアップにとって、セカンドオピニオンの重要性は特許に限られないかもしれないですね。

新しい名刺

六本木通り特許事務所の名刺ができました。

弁理士大谷の新しい名刺

いままでいただいたさまざまな名刺を拝見しつつデザインを決めたのですが、弁護士の方々の名刺をじっくりと、細かいところまで気にしてみてみると、ある種自らの仕事への矜持のようなものを感じるものがいくつかありました。

ここ数年、私自身弁理士ではあるものの弁護士の方々とご一緒する機会が多く、携わってきた仕事もどちらかというと裁判所寄りです。裁判所の仕事、つまり訴訟案件は、裁判所に出頭する期日の前に数十頁の書面を提出し、当日はその内容を踏まえて裁判所の指揮に従いつつ、場合によってはその場で議論もして次回の期日へと続いていきます。

当日に口頭で話すことも大切ではあるものの、あらかじめ提出する書面でどこまで説得的な主張を示すことができるかが肝となり、論点の強弱、議論の流れといった内容面はもちろん、それをいかに視覚的に伝えるかということにも心を砕きます。そこでは見出しの有無、効果的な引用、下線の引き方、改行箇所など、ともすれば些末な形式面も大切な要素となります。

特許実務、より広くは紛争実務は、細部へのこだわりが結果を左右します。そうした細部への執着が感じ取れる名刺がいくつかあり、ロゴなし色なしの白黒のみで緊張感のあるデザインを目指してみました。

もちろん改善の余地はあるのだとおもいますが、SONYがロゴのデザインにこだわったように、時間をかけてもっとも美しいバランスの名刺にしていけたら、そのためにも一つ一つ、依頼者の期待値を超える仕事を重ねていけたら。名刺と向き合い、そんなことを感じた一日でした。

SONYのロゴの変遷

(https://www.sony.co.jp/SonyInfo/CorporateInfo/History/SonyHistory/2-23.html)

六本木通り特許事務所設立のお知らせ

弁理士大谷は2017年1月、渋谷から赤坂そして霞が関までを結ぶ六本木通りを拠点として、未来を変えていくスタートアップを最先端の特許実務で支える特許事務所を設立いたします。

2006年に特許というものに触れてから10年間、さまざまな経験をしてきました。

日米大手のグローバルな発明の権利化、日韓米仏の大企業間での東京地裁・知財高裁における権利行使、米国企業の日本でのライセンス活動、大型M&Aにおける知財DDなど、依頼者の事業に大きく影響を与える案件に携わってまいりました。答えのない、未解決の論点に取り組む機会に恵まれました。

こうした大手の困難な案件とともに、2012年からの4年間は創業期のスタートアップの案件にも注力し、特許出願、商標登録出願、資金調達時の知財DD、契約書知財条項のレビュー、特許戦略・知財戦略のセカンド・オピニオン、大手からの権利行使の防御、他社特許のデザイン・アラウンド、訴訟戦略の立案実行など、最先端の実務に基づく実践的な支援を行ってきました。

新たな価値を生んだ者が称えられ、さらなる創作に注力するゆとりを与えるのが特許制度、さらには知的財産制度の役割であり、新たな価値への挑戦にすべてを賭けたスタートアップこそ、この制度の恩恵を最大限に受けることができるはずと考えています。

2017年からは、スタートアップ、そして成長を遂げたのちも起業家精神を失うことなく新たな挑戦をし続ける企業の成長に、私自身常に成長し、柔軟な視点を失うことなく尽力してまいります。

特許出願に取り組むスタートアップに弁理士が聞くべき7つのポイント

未来を変える発明は、大企業や大学の研究所だけでなく、創業間もないベンチャー企業でも生まれています。むしろ「オープンイノベーション」が近年大きな注目を浴びているように、小回りの利く、失うもののないベンチャー企業が投資家からの資金を元手に圧倒的な成長を目指して会社を立ち上げる中で、現状の課題を新たな角度で捉え、そして解決していく発明が次々と生み出されていると言えるでしょう。

しかし日本でいえば、約30万件の特許出願のうちおおよそ90%は大企業によるものであり、特許出願という市場の中でみると、スタートアップによる特許出願はせいぜい数%。経済的な観点からは、特許出願を支援する弁理士にとって、一般に優先度が低くならざるを得ません。その結果、弁理士とスタートアップとの間には大きなギャップがあります。

私は偶然、友人からの紹介、職場の弁護士からの紹介といった身近なところから始まり、投資家、既存依頼者からも紹介いただけるようになり、ここ4年程で20社前後のスタートアップの出願を代理させていただく縁に恵まれました。その中で、スタートアップによる特許出願を実りあるものとするには何に気を付けるべきか試行錯誤し、改善を積み重ねてきました。

スタートアップとしては弁理士に何を話せばよいか分からず、弁理士としてはどこから聞けばよいか分からないという場面も少なくないのが現状であり、まだまだ道半ばではありますが、これまでの私なりの気付きを書いてみたいと思います。

はじめに

スタートアップとのミーティングには、基本的に創業メンバーなど役員が入ります。特許出願の対象となる事業のビジネス面の責任者と技術面の責任者に出席いただき、また、いずれかを知財担当の責任者として決めていただくのが理想です。実行力をもって、ビジネスと整合した特許出願を完成させていくためには、スタートアップの強いコミットが欠かせません。

役員などの貴重な時間を割いてもらうとなれば、いかに特許出願完了までの負担を減らせるかが大切な視点となります。事業計画とそれを実現するための技術をそれぞれじっくりと聞いて、特許出願の対象とする発明を特定することができればよいのですが、そうもいきません。初回ミーティングの1時間である程度の出願可能性の感触を伝えるためには、効率性が求められます。

これまでの経験から、次の7つのポイントについて最初に確認し、それから事業や技術について適宜詳細を聞いていくと上手く進むことが多いです。

ポイント1 ローンチ予定のプロダクト又は追加予定の新機能の概要

スタートアップのみなさんには「新規性」が特許性の一要件であることがあまり知られていません。

どういったプロダクトをこれから提供するのですか?

既存のプロダクトにどういった新機能を追加するのですか?

という問いをすることによって、大前提として、特許出願日において新しくなければならないことを理解頂けているかどうかが分かります。

ポイント2 開発状況

まだプロダクトないし新機能が公開されていないとしても、逆に、開発が進んでいないことも少なくありません。大きなコンセプトはあるのだけれども、言ってみれば願望に留まっていて、それをどのように実現していくのかを模索中であれば、発明はまだ生まれていないことになります。

今どこまで開発は進んでいますか?

サービスの提供開始はいつを予定していますか?

という問いをすることによって、発明の成熟度のようなものをおさえることができます。

デモ版が出来上がり、動作を見させていただくことができるとスムーズに進みますが、まだその手前にいるときには、どのように対応していくのがよいか、発明は生まれているか、生まれていなければこれから数か月で生まれてくるであろう発明を公開前にきちんと説明してもらえるかなど、うっかり発明が公開されてしまう事態を避けるために留意していくことになります。

ポイント3 開発体制

開発状況と共に、開発体制を聞くことも大切です。社内に主力エンジニアがいるのか、あるいは外注なのか、事業責任者と開発責任者の関係性といったことを知ることができると、開発予定の実現可能性に目星をつけることができます。CEOとCTOがミーティングに参加している場合には、

お二人はいつからのご縁なのですか?

といった質問もしてみると有益であることが少なくないでしょう。

ポイント4 顧客が抱えている痛み

ビジネスも発明も、課題があり、それを解決するものである点で同一です。ビジネスからみると、それは顧客がどのような痛みを抱えているのかということになります。

ターゲット顧客は何に一番困っているのでしょう?

という問いをすることによって、発明を特定していく上での前提である課題の特定につながります。この際、スタートアップは当然大きな市場を狙いたいという事情がありますので、想定する顧客を広くおっしゃることが多々あります。そこを一段深堀りして、

今後1、2年の事業で主な顧客としてみているのはどのあたりですか?

という問いをすることにはとても価値があります。

ポイント5 なぜ今か

イノベーションは時代と合っていて初めて実現することが多いです。早すぎても遅すぎても、プロダクトの爆発的な普及は起きにくいでしょう。必ずしも、今でなければならない強い理由があることがスタートアップの成功条件ではありませんが、ディープラーニングという技術的なブレークスルーによってAIに今再び光が当てられているように、また旅館業法の規制緩和によってAirbnbのような民泊に日本でも注目が集まっているように、今そのビジネスを立ち上げるから成功するのだと言える構造的な背景が時としてあります。

なぜ今までこのビジネスはなかったのでしょうか?なぜ今なのでしょう?

とうい問いをすることによって、従来技術の把握にもなり、また、マクロな視点でビジネスを理解するヒントになります。

ポイント6 課金ポイント

スタートアップのビジネスは、最初は無料でどこかのタイミングで有料化というケースもよくありますが、いずれにしても、いずれ収益を上げていくわけですので、誰かに対して課金することとなります。

課金する上で直接的に重要な機能を支える技術について権利取得をすることができれば、競合企業も同様の収益モデルを実現しようとすれば同じ課金ポイントを設定したいはずですので、ビジネスモデルの模倣の抑制に効果的です。

このサービスは誰からお金をもらうのでしょうか?

という問いをすることによって、ビジネスモデルの全貌が見えやすくなります。

ポイント7 特許への期待

スタートアップのみなさんは、特許制度についての断片的な情報に触れて、そして何らかの接点で弁理士と出会い、相談に来ます。ときには、出願をすればすぐに権利が手に入るように思われている方もいらっしゃいますし、特許権を取得できれば自社で実施する上で特許問題はなくなるように思われている方もいらっしゃいます。

特許への取り組みからどういったメリットを期待なされていますか?

という問いをはっきりとすることによって、情報ギャップから生まれる相互の誤解を減らすことができ、また「競合である○×との差別化をしたい」というように競合企業についてのインプットを受けることができる場合もあります。

おわりに

いかがでしょうか。おそらく、初回のミーティングで特許に取り組む意義を感じていただけないと、依頼を受けることは難しいです。20社程度ご依頼を頂けた背景にはそれ以上の数のご依頼頂けなかった出会いがあります。

初めて会った1時間でしっかりとコミュニケーションが取れれば継続的な関係が生まれ、1件目に留まらず、次の発明についても開発段階から話を聞いて、適切なタイミングで出願要否のアドバイスをしていくことも可能となります。

7つのポイントは一例ではあるとしても、スタートアップ側には役員レベルで知財担当を決めてコミットしてもらうと同時に、弁理士側では効率的に情報を引き出すための問いをしっかりと用意してミーティングに臨むことで、スタートアップと弁理士との間にあるギャップを縮めていくことができるように感じています。

スタートアップ支援に取り組まれる弁理士又は弁護士の先生方にとって、1つでもご参考になるポイント、問いがあればと嬉しいです。

2021年2月13日追記 初回ミーティング時に発明がまだ生まれていないことも多く、現在は、そうした状況から特許出願に適した発明を認識するまでのプロセスを数か月かけて行うプランを提供しています。また、発明が生まれているとはどういうことかについてはこちらの記事で解説しています。